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2010年07月30日

元気女子とネクラオタク男でお送りする、社交ダンス部青春群像劇! 1巻目の「BUTTER!!!/ヤマシタトモコ」


BUTTER!!!(1)/ヤマシタトモコ
講談社/アフタヌーンKC

オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■■□□
 

明るく陽気な女の子と、いじめられっ子で根暗なオタク少年とが高校の社交ダンス部に入ることになり、それぞれに戸惑いや葛藤がありつつもダンスの世界に魅せられていき、部員同士の絆も芽生えていくというドラマ。
どこにでもいそうでいて、愛嬌のある個性を持った登場人物達が光っておりまして。特にネクラオタク少年のウザさが見事。なんかもう蹴りたくなるくらいの卑屈さ。

 
新入生の荻野目夏は、爽やかヒップホップな世界に憧れる女の子。意気揚々とダンス部に入部したものの、そこはダンスはダンスでも社交ダンス部でありまして。
同じく新入生の端場敬弘は卑屈でオタクな男の子であり、同じ中学であったイジメ男子のいたずらにより、社交ダンス部勝手に入部させられてしまう。
他にも個性的な面々の集う社交ダンス部ですが、ダンスのいろはを教わりながらもネガティブな言動ばかりの敬弘くんに対して、根っから明るい夏さんは腹立ちを募らせる一方で……。という流れ。

和気あいあいとした部活風景にあって、この敬弘くんの卑屈さ、ウザさ、ダメ男っぷりがやたらと目立っておりまして。
自己嫌悪の裏返しとして放たれる、他人を拒絶する言葉の数々がもー非常にうっとおしい。こんな奴もーイジメられてもしょうがないわというほどでして。ここまで主役として嫌なキャラをよく生み出したなぁと感心。
そしてそんな彼が、嫌々ながらに部活動やりながら、ダンスの相方となる夏さんやクールで清楚な副部長の二宮和美女史を始め、部員たちとの関わりの中で少しずつ成長と変化を見せていくという流れ。
主役は夏さんではあるんですが、彼女の前向きさが周囲にどのような影響を与えていくかというドラマ作りのようです。
あと二宮女史もステキよ。

体育会系のようであり文科系のようでもあるという社交ダンスをモチーフに、定型的な青年誌部活コメディを土台として、著者ならではのキャラクターの強みを肉付けしていく漫画。
不足なく読めるものの、このいかにも定型的な男性向け青春部活ドラマなのは個人的にちょいとひっかかるなぁとも思ったり。
主人公の元気少女が、ダメ男を生まれ変わらせるというのもいかにもな感じだし。作品の骨格部分に目新しさが無いのがちと不満。
しかし脇役キャラのさりげない良さはなかなかのものでして、二宮女史のステキさはもちろんのこと、おとなしいようでいて実は熱血な部長の高岡くん、宝塚に憧れる掛井くん、長身だけれどなんか地味な柘さんと、何かどこかしら変なところがあり、目が離せないのだ。
……そのせいかなおさら、ヒロインであるはずの夏さんの単純で分かりやすい性格がなんか薄っぺらく感じるんだよなぁ。

しかしまだまだ話も始まったばかりでして、それぞれのキャラのバックボーンとエピソードが語れるのもこれからが本番。
夏さんにもなにやら過去に抱えてそうですしな。各キャラがうまいこと絡みあってドラマを組み立てていけばより面白くなりそう。
巻末の番外編でも分かるように、キャラの性格をこまかなシーンで演出する持ち味もあるし。

構造的に長期連載も可能な作品だし、キャラは良いので気長に付き合っていくと楽しいことになりそうだな、という予感は充分にある作品。
「青春部活群像劇」という枠組みを超えたところで何かやってほしいと期待します。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 23:57 | トラックバック
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2010年07月29日

だらしのない一人暮らし女子の生態は……なぜだかこんなにもキュートだ!? 1巻目の「彼女のひとりぐらし/玉置勉強」


彼女のひとりぐらし(1)/玉置勉強
幻冬舎/バーズコミックス デラックス

オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■■□□
 

自宅でフリーランスの仕事を細々と営む独身女性。彼氏ナシ。
そんな彼女の、寂しくてズボラでだらしのない日々の暮らしっぷりを、多すぎる独り言とともに描くコメディ。
みっともないにもほどがある残念な女子の日常を生々しく描くとともに、だらしないがゆえにみっともなくはしたない、そんな飾り気の無い女性の姿に潜むある種のフェチズムを見いだす作品。エロいんだけれどエロくないのが、逆にエロいわけよ。

 
主人公の輿水理香は26歳独身。
会社勤めを辞め、フリーのデザイナー・イラストレーターとして身を立てているものの、身分はペーペー。
一人暮らしで自宅勤務のために出会いもなければ一日中家でだらだら過ごす身でして、酒にゲームにと自堕落にゆるみきった生活を続ける日々。
でもやっぱり、素敵な彼氏と素敵な暮らしを送りたいわーと日々妄想に励むものの、現実はみっともないこと甚だしい方向にエスカレートしておりまして。

そんな「残念な女子」が、いかに日常を残念に過ごしているか、その生態をつぶさに観察するような漫画でして。
酒飲みながらステキ生活に想いを馳せたり、風呂上りの下着姿でごろごろ転がってPSPしたり、一人でラーメン屋に行ってビールも頼んじゃうし。
風邪ひいてダウンしたらやたらと不安になって心が折れそうになるし、不摂生がたたっておなかの肉がぶにょんぶにょんになるし、冷蔵庫で賞味期限がとっくに過ぎた調味料とか発掘するし。
そういっただらしなさやみっともなさに一喜一憂する様子が、おかしくて滑稽で、ちょっぴり切ないわけだ。

女子の一人暮らしっぷりそのものをコミカルに描く作品というと、元々は女性誌での作品が多く、そちらは読者である女性に対して共感を呼ぶ作りであったのに対して、こちらは男性向けに男性が描いているのが特徴。
そのため「女子の生態」として描かれていても、実は理香さんのやってることはあまり性別は関係なかったりする。このへん、あえて意図として「オッサン化」しているところをネタとする演出であるのかもしれないし、男性が読んでも共感できるようにしてあるのかもしれない。

日常エッセイとしてもおかしくないよなという内容ではあるんですが、物語としてのドラマ性は無いはずなのに、作画の変化と起伏があるためにダレずに読むことができるのも特徴。
構図やポーズにはだいぶ手間がかかっており、部屋ん中でゴロゴロしているだけでも動きが色々とあり、そのうえで肉体を強く意識させる作画でもあるため、いかがわしい視線でもって理香さんの肢体を追う楽しさもあるんですな。
風呂場でだらけていたりあぐらかいたり、シャツがめくれあがっておへそが見えたり。
そういった油断した姿のみっともなさから垣間見える色気の無いエロさが良いのだ。
かっこ悪い姿を見せる女の子ってかわいいよね、という目線。

時に寂しかったり時に辛かったりしつつも、なんだかんだでお気楽に独身生活を謳歌している理香さん。
あまりのだらしなさに「しょーがねぇなぁこいつは」と思いつつも、かわいい女子ならばニヤニヤして眺めていられるねぇという漫画。
アホっぷりがステキで楽しいのよこれ。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 22:22 | トラックバック
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2010年07月28日

大人の趣味として描かれる、ありそうで無かった自転車漫画!女子もかわいいぞ。 1巻目の「のりりん/鬼頭莫宏」


のりりん(1)/鬼頭莫宏
講談社/イブニングKC

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■■■□
 

どこにでもいるような社会人男子がとあるきっかけからロードバイクを始めることになり、そこに女性との出会いもありライバルの登場もあり、というドラマ。
さすがの作画で描かれる自転車の世界も見事ですが、著者のこれまでの作品のイメージとはだいぶ異なり日常的でコメディ要素が先に立つ内容となってます。けっこう意外。

 
主人公の丸子一典は自転車嫌いでクルマが趣味の社会人。
あるきっかけからラーメン屋の娘さんでロードバイク乗りの女子高生、織田輪と出会い、色々とトラブルが重なった挙句自転車に乗ることになる。
んで、合コンで知り合った女の子やらクルマ仲間の連中やらもなんだかんだで自転車と関わることになるのだが、なんだか主人公には自転車に大して良くない思い出があるようで……。てな感じ。

レースとレーサーを主題に置いた自転車漫画とは異なり、ごくごく普通の一般成人男性が自転車の世界に足を踏み入れるというテーマでして、一般車とロードバイクとの違いや一般車道での自転車の走り方を丁寧に日常目線で語っているのがポイント。
特に1巻目の途中に挟み込まれる、スポーツ自転車での車道での走り方、複数人でのポタリングの際のコツやなんかを具体的にマニュアルとして描いておりまして。
このへんに単にレースするぞという自転車漫画ではないのかも、と思わせてくれるところがありますな。

そして朴念仁っぽいんだけれど意外に熱くなりやすい主人公を始め、博多弁の織田輪や涼しい顔して言動が怖いその母親に、学生気分がそのままに大人になったような丸子の仲間達、そして気が弱そうなんだけど厄介なところで大胆なカラモモさんなどなど、どのキャラもみんないい味出しておりまして。
こいつらが自転車という関係で動き出したらきっと楽しいことになりそうだなぁと充分に思わせてくれるほど。

んでもともとメカ作画には定評のある著者だけに、ややこしく繊細な造形である自転車類もなんなく描いてみせておりまして。こりゃーこの人ならば問題は無いだろうという安心感すらありますな。
レース展開も匂わせるポイントもあり、今後どうなっていくかはちとまだ読めないところはあるんですが、トラブルとドタバタ続きの序盤に、一筋縄ではいかないキャラも次々と登場し、丸子くんの身に振りかかる災難に笑いつつも、彼が自転車との出会いからどのように変化していくのかが楽しみになってくる作品。女性キャラもキュートだしね。

話の作り自体は、「大人の趣味としてゼロから始める自転車の世界」というハウツー要素も含んでいるため、自転車にちょっとでも興味のあったような人に対して「いいなー、やっぱりロードバイク買おうかなぁ」と思わせてくれるのが罪だ。
現にこれ読んでロード欲しくなっちゃったもん。このへんも、自転車レース漫画とちょっと違うところ。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 22:38 | トラックバック
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2010年07月27日

キャラの掛け合いが楽しい、安心お墨付きの萌え系4コマ 1巻目の「未確認で進行形/荒井チェリー」


未確認で進行形(1)/荒井チェリー
一迅社/IDコミックス/4コマKINGSぱれっとコミックス

オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◇◇
マニアック度:■■■□□
 

家庭的だけどちょっと意地っ張りな女の子の元にやってきたのは、いいなずけである同じ歳の男子とその妹。
突然に始まった小姑付きの同棲生活を、学校で家庭でと交互に舞台を入れ替えながらドタバタ気味に描くコメディ4コマ。
設定にそれほど凝らずともキャラがわちゃわちゃしているだけで面白く読める安心のクオリティ。
萌え系4コマで何か無いかなーと探している時にとりあえず手に取ってみてもまったく問題の無いレベル。

 
主人公である夜ノ森小紅の16歳の誕生日の日に居候としてやってきた白夜と真白の二人。
白夜は見た目イケメンだが常にぼーっとしていて何を考えているのか分からないが、実は情熱的。
真白のほうはまだ小学生ながら強気なしっかりもので、小紅が自分の兄の嫁としてふさわしいか見定めようとしているものの、根はまだまだお子様。
そして学校では完璧な才女だが家では妹が大好きでロリ幼女も大好きという変態気質の姉・紅緒を加え、日々の暮らしを舞台にコメディやりつつ、小紅と白夜の二人に芽生える恋の行方を小紅の視点をベースに描くという内容。

普通の女の子のもとに突然に婚約者とその妹がやってきた、というシンプルな設定で、類型的に分かりやすい特徴を持たない作品ではありますが、これがコメディ4コマとしてしっかり面白い。
キャラの性格設定もカテゴライズ可能な性質にちょっとひとクセ与えてあり、かつ登場人物ごとの絡みと関係性に伴い個性が多面的に組み上がってくるため、よくいるキャラでありそうで、その言動とリアクションにきちんと特色が出ているのだ。

例えば小姑幼女の真白だと、兄の嫁候補である小紅に対しては背伸びして強気な態度だが、ロリ好き変態の紅緒は苦手、という具合に、キャラに与えられた性格が他のキャラにどのように作用しているかをちゃんと描くことで、登場人物が構成上での役割ではなく自らの個性で動いているように読めるわけですな。

そのため「ボケとツッコミ」というようなパターンとは違う掛け合いをそれぞれの個性を眺めつつ読むことができるため、シチュエーションにあまり変化が出ないはずの学校生活と家庭での暮らしぶりという舞台であってもキャラの会話を読んでいるだけで楽しいわけだ。
ほいでもって、女性キャラのかわいさも安定感ばっちり。
小紅は安産型の巨乳だし。紅緒にいじられる真白、という変態姉キャラと被害者ロリ幼女という図式もニヤニヤできるし、白夜くんも無口だけれどけっこうストレートに自分の思いを語るし、それ聞いて照れる小紅がまたかわいいし。んであとお風呂もあるし。ひゃっほう。

とまぁ萌え系4コマとして、シチュエーションや設定、外観的に分かりやすい特徴に頼ってない分明確に他の作品との差異を見つけにくいマンガですが、読んでみると「何これすげー楽しいわ」と顔もゆるむし頬もほころぶよ、という作品。
こういうのは作者の地力によるものですよねほんと。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 22:26 | トラックバック
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2010年07月26日

かわいい絵なのに悪質・暴走・無軌道4コマ!この破壊力は類を見ない! 1巻目の「不思議なソメラちゃん/ちょぼらうにょぽみ」


不思議なソメラちゃん(1)/ちょぼらうにょぽみ
一迅社/IDコミックス/4コマKINGSぱれっとコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◇◇◇
マニアック度:■■■□□
 

野乃本魔法拳、という怪しげで魔法な拳法を使う二人の貧乏姉妹とその他が、設定も何も関係なく無軌道にフリーダムなナンセンスギャグをハイテンションをお送りする、という4コマ。
萌え系4コマか〜、と気安く手を出すと痛い目にあいます。なまじ手間のかかったかわいい作画なもんでタチ悪いわこれ(褒めてる)。

 
謎の魔法拳の使い手であり、意味不明な言動と暴力や悪事をノリノリで駆使する魔法少女(?)のソメラちゃんと、その妹でツッコミ役件被害者であり作中唯一の常識人ククルちゃん。
そして二人の友人でこれまた意図も理由も分からない行動を繰り返す雫ちゃん、オーディションで途中からレギュラーキャラとなる松嶋、あと人造人間や宇宙人などなどが登場人物。
……というような紹介は言ってもしょうがないというか、ネタの自由さのため途中から設定があってないようなことになってしまう4コマでして。

明るく賑やかなんだけれど意味のまるでわからない言動をソメラ他が繰り返し、いちおうツッコミ役のククルがフォローにまわるという不条理ギャグ。あとソメラのえげつない行為に何故かノリが熱血バトルものっぽくなったりとか。
一応、起承転結と言いますか、話ごとに流れというものはあるものの、局面ごとの展開やシュールなボケに「何でそうなる」「何が起こった」という混乱を読み手に巻き起こすとともに、次第にこのナンセンス具合が心地良くなってくるという作品。
でも絵はかわいいんだよな〜。作画レベルの無駄遣い。

しかしネタ自体が、元からある価値基準やキャラのイメージに破壊と破綻を与えるギャグであるため、最初っからこのノリが全開だと少々空回りしている印象もある。
登場キャラが破壊と破綻を自分らで演じ、収集も自分でつけるため、ネタが取り留め無くなってると言いますか。
そのためか、1巻目中盤からはゲストキャラとして宇宙人や謎の生命体なんかが登場し、主人公側に対して彼らがボケを繰り出すという方向に。結果、ギャグとしての破壊と破綻を与えるものと受けるものとの立ち位置が明確となり時に入れ替わり、ギャグとして安定して読めるようになってます。

きらっきらのお目めでアニメ調のキャラなのに、やってることがマサルさんかジャガーさんかという漫画。
この独特のノリはハマると惚れる。
個人的には、パロネタや模写ネタ、あと下ネタをもっと読みたいなーと思ったり。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 22:40 | トラックバック
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ちょっぴりエッチに、とびきりピュアに。心の鍵をめぐるハートフルな連作オムニバス。 1巻目の「あいカギ/犬上すくね」


あいカギ(1)/犬上すくね
小学館/サンデーGXコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■□□□
 

心の鍵を開ける能力を持った不思議な男の子と女の子が、様々な事情から言いたいことをしまいこんだ人たちの心を開き、ドラマが生まれるというオムニバス形式の作品。
お話の中で出てくる登場人物同士がリンクし合い、また著者の過去作品ともつながりがあり、そのへんファンにとってもお楽しみ。

 
大きくなったり小さくなったりと姿を自由に変えられる鍵の精・ケンと、彼の持つ「心のカギ穴を開く」能力を行使することができる謎の少女・きいと。
カギ穴を開いた時に起こるという「素敵なこと」を求めて、彼らふたりがいろんな人々のトラブルを解決してゆく、という流れ。

主に恋愛関係をテーマにした読み切り短編の連作。
ですが、心にカギ穴を持つ人間しかケンの姿を見ることができない、にも関わらず、普通の状態でも彼を確認できる女性・あやめと関わることにより、あやめの視点からケンときいとの二人が何を求めているのかも追う作り。

それぞれの話ごとに、人物や背景、あるいはひとつのシーン、ひとつのギミックに何らかのひとひねりさせた要素があり、それが特徴となることで話ごとの印象がしっかりと生まれるようになってまして。
受験生の女の子が叫んだ本音にちょっとしたことが仕込まれていたり、ニューハーフやBL作家、ライブ中に全裸になるボーカルといった特色を持つキャラがいたり。
こういった「ちょっと変な」ワンポイントがいいメリハリを産んでます。

また、登場する女性キャラもみんなキュートで愛らしく、応援したくなるような人となりとなっており、時には彼女たちに予想外の行動を取らせ話をうまい具合にかき回し、制限のあるモチーフをうまく飽きずに読ませるようになってます。
んで、カギを「穴」に「挿入」するということ自体が暗にセクシャルな意味を持っていることを明示するとともに、ちょっとだけエッチだったりするのが軽めのスパイスとして作用しておりまして。
設定的に、人間関係の変化で話を組み立てる恋愛ドラマ・人情ドラマであり、下手すると凡庸な内容ばかりになりそうなところを地力のある巧さでカバーしている漫画。もちろん絵もかわいいしね。
あやめさんはメガネ女子だし(重要)。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 01:13 | トラックバック
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2010年07月23日

特技・買い物、欠点・買い物の脳天気娘がショッピング暴走!楽しくてたまにタメになる! 1巻目の「しょっぴんブギ/佐藤両々」


しょっぴんブギ(1)/佐藤両々
竹書房/バンブーコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■■□□
 

良いと思ったものは片っ端から買い物しまくるというOLさんと、同じく買い物は好きだが倹約家の友人。このふたりのコンビを中心に繰り広げられるコメディ4コマ。
主役がOLさんなのでくくりとしてはオフィス4コマに分類されるものの、「買い物」がテーマとなっているため話ごとのネタは幅広く、また主役の掛け合いも楽しいために飽きずに読める作品。実在するんだろうなぁと思わせるヘンテコ商品を眺める面白さも。

 
陽気なツインテOLの馬場麗は買い物好きで買い物上手。お得なもの、便利なものを見付けてくる能力に長けるが、後先考えない性格なため良いと思ったものはその場で何でも買ってしまうという困った性格。
同期で友人の定本月詠も同様に買い物好きだが、節約大好きの倹約家でお金にはシビアなタイプで、馬場ちゃんのブレーキ役件ツッコミ。
そんなお金大好き、買い物大好きな二人が、お金と買い物にまつわる賑やかな日々を送るといった内容。

買い物で4コマが成り立つのか?と思ってましたがこれがじわじわと楽しい。
バレンタインに花見に夏祭りと、季節ごとの定番イベントにまつわるさまざまな「商品」を馬場ちゃんが買い物し、それに対し周囲のリアクションが起こると同時にイベントの行く末が話をまとめるといった作りでして。
その馬場ちゃんの買ってくるものが買い物マニアの無軌道っぷりを発揮し、単なる無駄遣いから意外性のある商品まで飛び出し、ツッコミ役の定もっちゃんと一緒に「いくら使ったんだ!?」とか「どこで売ってたんだ!」と反応してしまうわけだ。

んで出てくる商品も、たぶん探せばどこかで本当に売ってるんだろうなーという変な物が出てきたり、便利アイテムやお得アイテムの紹介なんかも兼ねており、変なところでの商品知識が身についたりもする。
カタログ通販パラパラ眺めて、「こんなの何に使うんだ」とか「便利そうだけど高いなー」なんてやるあの感覚だ。

加えて、馬場ちゃんと定もっちゃんによるボケとツッコミの応酬も騒々しくも楽しい。
買い物好きという共通点はあっても、片方はお気楽で散財しまくりで片方はしっかり者で倹約家で。凸凹コンビなんだけれど仲がいい二人のやりとりをぼーっと眺めているだけで自然と笑みがこぼれてくるのだ。

同じ商品での選び方の違いやちょっとしたリアクションの差で的確にキャラの違いと個性を演出しておりまして。当たり前のことなんだけれど、この作者このへん巧くてですね。複数作品を読み比べると役割として似たキャラはいても個々の特徴はかなり立体的に造形されており、みんな違う個性があるのだ。

どんな人でも一様に楽しめる日常コメディ4コマとして手堅く安心して読める出来栄え。
女性キャラかわいいので男子としても読み甲斐があるしね。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 20:58 | トラックバック
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2010年07月22日

人間に絶望したジャンヌの心を優しく癒す、あたたかな人々のドラマ。 1巻目の「水の森/小林有吾」


水の森(1)/小林有吾
講談社/月刊マガジンKC

オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■□□□
 

神の加護を受けながら人間の醜さに耐えかねたジャンヌ・ダルクが現代の日本に飛ばされ、そこで出会った人々とドラマを繰り広げる、という内容。
深い傷を負ったヒロインと、彼女に温かく接する登場人物達とのヒューマンドラマですが、テンプレート化を避けるように努め、キャラのエピソードを深めていく作りでして。生きた言葉と生きたドラマを感じさせる作品。

 
今まさに火刑に処させれようとしているジャンヌ・ダルク。
神の意思を実行するものとして奇跡を起こす身ながらも、争い裏切り憎みあう人々の姿に人間不信に陥り、冷え切った心は自ら死を望むまでになっていた。
そんな彼女に対し造物主はチャンスを与え、600年後の現代日本へジャンヌを転送する。そして彼女は、純朴で熱血漢な一人の男性、陣内と出会う、という物語。

日本へと飛ばされたジャンヌは神様による過保護とも言える過剰な加護を受けており、彼女に危害を加える者やたぶらかす者には罰を与え、ジャンヌの感情の起伏は周囲の環境をも左右するという力を持ってまして。
そんなジャンヌに恋心を抱く陣内と、自分に関わっては不幸になると彼を遠ざけようとするジャンヌ。
しかし愚直な陣内の想いは次第にジャンヌの閉ざされた心を開くことになる。
二人のドラマを話の主軸に据えるとともに、二人の周囲にいる人物がそれぞれに話ごとの主人公となり、ジャンヌとの関わりを描いていくという作り。

超常的な力を持つがゆえに排他的で他人と心を通わすことのないジャンヌが徐々にヒトとしての大事なものを取り戻していく話でして、ジャンヌを第三者として話ごとに入れ替わる主観でもって、それぞれの立場からジャンヌの人となりを追っていく内容。
不思議な少女に一途な恋をする陣内。ジャンヌに嫉妬する陣内の幼馴染み。ジャンヌと友達になろうとするちょっとお馬鹿な女の子。などなど。

彼らがそれぞれにそれぞれの思いを抱え、ジャンヌという不思議な力を持つ少女と関わるわけなのですが、一方的な泣かせとヒューマニズムの話に着地せず、それぞれの登場人物の性格とバックボーンを丁寧に成形し、キャラの持つエピソードをじっくり描いているのが特徴。
類型的な話に落とし込まず、純粋さとエゴとを合わせ持ち、時に愚かで時に愛らしい彼らの思いと行動がドラマを生むんですな。だからこそ、ここぞというところでの言葉にも重たさがあり、読み手に響くようになってます。

ピュアなヒロインにピュアな人間たち、という作りであっても嘘臭く薄っぺらくならず、不思議な説得力を感じる漫画。生真面目にキャラとストーリーとに向き合った姿勢にも好感が持てる。
徐々に心を開いて良くジャンヌですが、その一方で紛争地帯に赴いて何かやってるようでもありまして。
ストーリーも気になるところ。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 23:06 | トラックバック
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2010年07月20日

気になるあの娘がゾンビになっちゃったら!?死体だけれどかわいい彼女! 1巻目の「さんかれあ/はっとりみつる」


さんかれあ(1)/はっとりみつる
講談社/週刊少年マガジンKC

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◇◇
マニアック度:■■■□□
 

ゾンビ好きで生きた女性には興味が無いとまで言い切る少年が、古文書を頼りに人体蘇生薬を作ったところ、ひとりの少女を生きた死体にしてしまうという設定から始まるラブコメ作。
女性キャラのかわいさとエロさを堪能しつつ、長編ドラマとしてじっくり読ませる作りとなってます。

 
高校一年生の降谷千紘はゾンビマニアの男の子。趣味を同じくする仲の良い従姉妹がいるものの、今のところ女性との恋愛には興味が無い様子。
そんな彼が、どこからか手に入れた書物に記された蘇生術を死んでしまった飼い猫に試そうとしていたところ、近くの女子高に通うお嬢様、散華礼弥と親しくなる。
彼女は千紘の作った蘇生薬をこっそりと服用し、その後崖から落ちてしまうが、死んだと思われたその時、動く死体となって蘇った。てな導入。

めでたく(?)ゾンビとなった礼弥ですが、家庭に問題を抱えており、父親からの屈折した愛情による虐待に等しい仕打ちに悩んでいたため、これ幸いと千紘の家に転がり込む。
千紘に対しまんざらでもない礼弥と、憧れのゾンビっ娘の存在に喜ぶ千紘。しかし生きた死体である礼弥の、その身体に変化が現れだしておりまして。
礼弥の抱えるトラブルと、生きた死体としての問題と、そもそもこの蘇生薬はなんなのかという謎。そして恋の行方はどうなるどうなる、という内容。

キャラの紹介と設定、長編として解決しなければいけない要素の提示にこの巻をまるまる使って費やしており、ベースはラブコメながらもドラマとして物語を作っていくのかなという意図を感じさせる1巻目でして。
うまいところで2巻目へ続くとなっているため話の経過はどーしても気になるところ。どういった方向性に膨らませていくのかはまだ見えません。
しかし当たり前のように女性キャラは皆かわいくて、んでここぞというところでのシチュエーションによる盛り上げやサービスシーンにも抜かりが無いため、笑顔がまぶしい表紙にひかれて手に取ってみてもまず不足は無いレベル。
1巻目の時点でも潜む謎は大きいため、今後意外な展開が待ってそうな期待も煽る作品。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 22:17 | トラックバック
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2010年07月18日

和気あいあいとした群像劇なのに、絵にキャラに、こんなにも目が離せないのは何故だ! 1巻目の「玲瓏舘健在なりや/冨明仁」


玲瓏舘健在なりや(1)/冨明仁
エンターブレイン/ビームコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■□□□
 

下宿として利用されている洋館を舞台に、様々な若者たちの恋と騒動と賑やかな日常を描く作品。
しかし枠組みとしてはホームコメディに分類されるのに、まったくどれとも似つかないような独特の印象を与えてくれる。こだわりを持って描かれる作画に引き寄せられる漫画となってます。

 
文化財級の洋館である玲瓏舘。現在では美人の大家さんのいる学生寮として利用されている。
しかし維持管理の問題から閉館されることが決まり、学生たちにとって最後となる1年が始まる。
新たな住人としてやってきた主人公の目線で、どいつもこいつもクセのある学生たちがそれぞれにドラマを繰り広げるという作り。

非常に高い画力が見ごたえのある漫画でして、特に女性キャラに対する執念すら感じるような描写は見事。肉感的で破綻の無い体型を提示しながらも、そこにエロスとフェチズムを乗せておりまして。
しかし話として露骨なエロい展開があるというわけではなく、女性の持つ魅力を日常の風景の中から抽出するといったアプローチでして。確かにお風呂やお着替えもあるんですが、エロじゃないんだけどエロいわけだこれが。
絵としての女性キャラの多様さにも特徴があり、マンガ作画なのにこれだけ「美人キャラ」の描き分けができる作家というのはちょっといない。
もちろん女性キャラだけでなく、男性キャラから背景作画もかなりの凝りよう。

話のほうは、ストーリーそのものだとホームドラマか昼ドラコメディかというような筋書きでして。
これが質の高い作画と独特のテンポで描かれることにより、特にこれといった事件が起きているわけでもないのになぜか強く記憶に残るんですな。
ひとつのシーンに対する間とリズムの取り方が独特なところがあり、状況に伴う感情の変化をキャラの動きとともに丁寧に省略せずに描くため、少々回りくどい印象も受ける。
が、「ああこれって演劇なのか」と思うと腑に落ちる。ちょっとしたシーンでも絵に説得力があり、キャラのひとりひとりがしっかりとした主張を持っているのだ。

現時点では恋の波乱の予感はあるものの、物語として大きく動くような出来事も無く、はっきり言って話として何があるというわけではない。
しかし1巻を読み終えた時、あのシーンが、あのキャラが、あの表情が、次々と脳裏によみがえりもう一度読み返したくなるマンガ。
不思議な力に溢れており、読んで数日、ずっと記憶に残っていて「これは一体なんなんだろうか」と考えてます。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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和気あいあいとした群像劇なのに、絵にキャラに、こんなにも目が離せないのは何故だ! 1巻目の「玲瓏舘健在なりや/冨明仁」


玲瓏舘健在なりや(1)/冨明仁
エンターブレイン/ビームコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■□□□
 

下宿として利用されている洋館を舞台に、様々な若者たちの恋と騒動と賑やかな日常を描く作品。
しかし枠組みとしてはホームコメディに分類されるのに、まったくどれとも似つかないような独特の印象を与えてくれる。こだわりを持って描かれる作画に引き寄せられる漫画となってます。

 
文化財級の洋館である玲瓏舘。現在では美人の大家さんのいる学生寮として利用されている。
しかし維持管理の問題から閉館されることが決まり、学生たちにとって最後となる1年が始まる。
新たな住人としてやってきた主人公の目線で、どいつもこいつもクセのある学生たちがそれぞれにドラマを繰り広げるという作り。

非常に高い画力が見ごたえのある漫画でして、特に女性キャラに対する執念すら感じるような描写は見事。肉感的で破綻の無い体型を提示しながらも、そこにエロスとフェチズムを乗せておりまして。
しかし話として露骨なエロい展開があるというわけではなく、女性の持つ魅力を日常の風景の中から抽出するといったアプローチでして。確かにお風呂やお着替えもあるんですが、エロじゃないんだけどエロいわけだこれが。
絵としての女性キャラの多様さにも特徴があり、マンガ作画なのにこれだけ「美人キャラ」の描き分けができる作家というのはちょっといない。
もちろん女性キャラだけでなく、男性キャラから背景作画もかなりの凝りよう。

話のほうは、ストーリーそのものだとホームドラマか昼ドラコメディかというような筋書きでして。
これが質の高い作画と独特のテンポで描かれることにより、特にこれといった事件が起きているわけでもないのになぜか強く記憶に残るんですな。
ひとつのシーンに対する間とリズムの取り方が独特なところがあり、状況に伴う感情の変化をキャラの動きとともに丁寧に省略せずに描くため、少々回りくどい印象も受ける。
が、「ああこれって演劇なのか」と思うと腑に落ちる。ちょっとしたシーンでも絵に説得力があり、キャラのひとりひとりがしっかりとした主張を持っているのだ。

現時点では恋の波乱の予感はあるものの、物語として大きく動くような出来事も無く、はっきり言って話として何があるというわけではない。
しかし1巻を読み終えた時、あのシーンが、あのキャラが、あの表情が、次々と脳裏によみがえりもう一度読み返したくなるマンガ。
不思議な力に溢れており、読んで数日、ずっと記憶に残っていて「これは一体なんなんだろうか」と考えてます。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月16日

お嬢様の華麗なる活躍を見よ!絵も話もキャラも高いレベルのイチオシ作品! 1巻目の「ジゼル・アラン/笠井スイ」


ジゼル・アラン(1)/笠井スイ
エンターブレイン/ビームコミックス

オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■■□□
 

20世紀初頭のイギリスとおぼしき舞台を背景に、育ちの良いお嬢様が庶民の住まう町で何でも屋を始め、様々な事件や騒動に巡りあうというドラマ。
繊細な作画に個性あふれるキャラクターと、うまい盛り上がりを見せるストーリー。新人作家とは思えないほどに安定感のある作品でして。
あとはもう読み手の好みの問題だというくらいに、誰が読んでもしっかりと面白いレベル。

 
良家のお嬢様らしいのに何故かアパートメントの大家として生活しているジゼルは、何を思ってか何でも屋稼業を始める。
アパートの店子でジゼルに密かな思いを寄せるエリック君は、家賃の滞納をタテにされ彼女の何でも屋を手伝うこととなる。
迷い猫探しから廃屋の掃除と人助けをする中で、出会いとドラマが生まれるという内容。

細やかな描線に描き込みも多く、んでもって時代背景が20世紀頭のイギリスということで、読んでて自然と森薫の「エマ」が頭をよぎる作品。
しかし内容は安易な模倣なんかではなく非常に質は高い。こりゃもう手練れのベテランの仕事だぜと舌を巻いた逸品。

衣装や調度品をつぶさに眺めてしまうほどの作画レベルに、「お嬢様の人助け」的なストーリーにきちんと起伏と見せ場を設け意外性のあるオチを用意してあるストーリー。
そしてジゼル嬢を始めとして、基本的にいい人ばかりだけどちょっとしたクセがキャラを立たせる個性として発揮されている登場人物たち。
どれをとっても穴というか未熟な点が見当たらず、かつそれぞれの要素が作品全体の雰囲気としっかりマッチし、非常に完成度の高い内容となってます。

主人公のジゼルは育ちが良く聡明で利発で教養もあり、行動も物言いも恐れ知らず。
ですが世間知らずでまだまだ子供っぽいところもあり、危なっかしさのあるところを陰ながらエリックが支えているというキャラでして。
強気なお嬢様キャラというだけでなく、ちゃんとウィークポイントを用意し、そこに周囲のキャラとの関わりも作るという抜かりの無さ。

そしてことあるごとにジゼルに対して向けられる「子供」というキーワードが作品全体に散りばめられておりまして。
彼女が何でも屋稼業の中で様々な人と触れ合い、時には正論の通用しないような目に遭いながらも、どんなレディに成長していくのかが大きな主題となっているようです。
1巻目ラストでは波乱の予感も。

マンガとしての出来はもう文句無いところですんで、あとは物語の方向性や提示されるテーマに対する答えがアリかナシかと言った、一歩進んだところで語るに値するほどの質を持ったマンガ。
ほんともう、読者にとってこれが合うか合わないかの問題だけです。
大きな破綻や激動のドラマとも今のところは無縁なため、静かに心を落ち着けて堪能できるだけに、連載がずっと続くことを願わずにはおれないですな。(第一次世界大戦前という時代設定が気になるけど)長い付き合いになりそうです。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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白井弓子という作者の系譜がここにある!気になる人はおさえておいて! 1巻目の「白井弓子初期短篇集」


白井弓子初期短篇集/白井弓子
小学館/IKKIコミックスrare

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◇◇
マニアック度:■■■■□
 

「WOMBS」「天顕祭」の作者である白井弓子の初期作品をおさめた内容。
テーマやマンガとしての出来を時系列として追うような読み方となり、同人誌掲載作と読み切り作品からなる1冊。
静かな作品が多いですが、ぐっと熱いものが胃の腑にとどまりいつまでも反芻していたくなるような、そんな印象の残る内容。

 
収録作は97年の同人誌掲載作からわりと最近のIKKI掲載作まで幅広い。
前半では、彼女のいる男性に密かな想いを寄せる画学生の女性を描いた連作シリーズ。中盤ではごく普通の母親の日常に幻想的な叙情性を見出す作品が続き、後ろのほうでは「女性とSF」を強く打ち出すストーリーが。

恋愛から出産、育児、別離まで、女であり母であるということを強く意識させる主人公たち、というのが一貫したテーマでして。
恋の契機や人生の節目、そして何気ない日常にある彼女たちの感じるもの、見ているものがそっと切り取り、読ませてくれているという感じ。

終いのほうに載ってる「成人式」は現在の「WOMBS」で試みている、「SFと女性」とテーマを同じくする作品でして、ここに行き着き現在の白井弓子という作者があるのかしらと。
習慣や生活環境、社会構成や風習に独特の特徴があるなかで、女として母として彼女たちはどう生きていくのか、変わるもの、変わらないものは何なのかという模索を読み手と共に考えさせてくれまして。
女として生き、深い愛もあれば哀しみも喜びもあり、強くたくましく、あるいは脆く繊細な彼女たちの姿がそれぞれに目に焼きつく短篇集となっています。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月13日

17歳女子高生の同居人は、全裸生活の三十路男子で!何そのご褒……罰ゲームは!? 1巻目の「ドントクライ、ガール/ヤマシタトモコ」


ドントクライ、ガール/ヤマシタトモコ
リブレ出版/ゼロコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◇◇◇
マニアック度:■■■□□
 

17歳の女の子が、家庭の事情からとある男性のもとで暮らすことになったものの、そいつは家の中では常に全裸の変態野郎だった、というドタバタラブコメ。……ラ…ブ…?……いやうん、ラブコメで合ってると思う……。
他短篇も1本収録。こちらはシリアス。
リブレ出版だといらぬ先入観持ってましたが、表紙にひかれて手に取ってみたらなかなか良かったのだこれ。

 
親が何かやらかしたらしく、家を出ることになってしまった女子高生・たえ子はお世話になる居候先を訪れたところ、玄関を開けて出てきたのは全裸の男・升田であった。
大いに取り乱すたえ子に対し、恥じらいも動揺もなく平然としている升田。
価値観を根底からひっくり返されたような衝撃を受けつつも、たえ子の悩める暮らしが始まるのだった、てな導入。

苦労人なためか非常に強気で頭の回転もよく、打たれ強いタフなたえ子。
そんな彼女が非常識な同居人にぐらぐらにされつつも紆余曲折を経て……、というストーリー。
「歩く出オチ」である升田に対してやることなすことツッコミまくりなギャグ一辺倒である展開の果てに、歩み寄る二人とどんどんかわいくなってくるたえ子さんが拝めます。
対して升田といいその友人といい、黙って服着て歩いていれば顔かたちのつくりはキレイにできてんのに、まったくもって残念な、天然ピュア変態な男ども。

序盤では彼らを下心の無い下ネタキャラとして描いてまして、なんちゅーか端的に表現すると「BLの変態イケメンが日常にいたら大変だよね」というシチュエーションからなるギャグなんですが、たえ子さんの心境に変化がおとずれラブコメ化する途中から面白くなってきますな。
活発だけれど聡明で、たいていのことには動じなさそうなんだけれど、自らの置かれた耐え難い状況に苦悩する様子が、実にこう、かわいいのだ。キュートなんですよたえ子さん。

ツッコミと状況説明をネームの多さで畳み掛け、少ないページながら密度の濃い掛け合いが特徴であり、また合コンシーンや学校での友達との食事風景などではわちゃわちゃとした賑やかな女同士の空気が楽しい。
本作は主にショートページでの連作となっており、話も早々に完結しておりますが、こういったノリで長編作やったらきっとこの人の面白いだろうなーと充分に期待させてくれる一冊。
いやほらなんせこの話、「家の中では全裸」という男と同居するというコメディだから、これ以上話を膨らましようが無いよなぁということは分かるわけですよ。
次回作が楽しみ。
ちなみに後半に収められている一篇は、表題作とは打って変わってナイーブな少女のあやふやでぐらついた内面を描写するシリアスな作品。けれど今後も読むならギャグコメディのノリがいいなーと。そういうの読ませてほしいなーと思ったのだからしょうがない。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月12日

こんなに子供と仲良くなれるなら、将来も安心?のハートフルコメディ! 1巻目の「ポンチョ。/高嶋ひろみ」

こんなに子供と仲良くなれるなら、将来も安心?のハートフルコメディ! 1巻目の「ポンチョ。/高嶋ひろみ」


ポンチョ。(1)/高嶋ひろみ
芳文社/まんがタイムコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■□□□
 

付き合っている恋人の家に遊びに行くんだけれどいつも彼女はバイトに出ていて、代わりにお留守番している妹となんやかんやと楽しく遊ぶというかわいくて賑やかな4コマ。
そしてややヘタレなんだけれど優しくていい奴な主人公と、慌てん坊だけどキュートな彼女とのいちゃいちゃっぷりににほわほわしてくる内容。

 
主人公の広志くんは23歳のサラリーマン。女子大生のななみさんとお付き合いをしているんですが、彼女はいつもバイトでなかなか会えず、代わりにななみさんとともに暮らす8歳の妹、ポンちゃんと遊ぶことになってしまい。
ポンちゃんともどんどん仲良くなっていくけれど、会えないななみさんとは離れていてもいつもラブラブ、てな作品。

天真爛漫な女の子に普通の社会人が振り回される様子がおかしくもあり陽気でほのぼのであり、作画としてもキャラが非常にかわいいために読んでいるだけで毒気も邪気も嫌なことがしゅるしゅると抜け出ていくような漫画。
キャラがみんな浮世離れしているくらいにほのぼのしてるのも特徴でして。

ポンちゃんが元気で子供子供しているのは8歳児として相応としても、広志くんもななみさんも子供のように純真でして。
ともすればヘタレ男子な広志くん、ポンちゃんとの相性がいいのも子供っぽいがためでして。映画館で子供にサービスでついてきたポップコーンが本気でうらやましくなったり、ポンちゃんの言うこともいちいち真に受け、大人としてどうなのかという姿を晒すし。
んでななみさんも乙女なうえにちょっと変な娘なのがまたかわええのだ。バイトでいつも家にいないのはお金のためではなくて趣味らしいし。

ポンちゃんの楽しく遊ぶ姿にほんわか笑顔になり、広志くんの憎めないアホっぽさにまた笑顔になり、ななみさんの愛情たっぷりな恋人っぷりにもまた笑顔になり。
底抜けに清らかな明るさに充ち溢れてます。毒っ気と言いますか、こう、ギャグであっても意地の悪いことする登場人物がほとんどいないんだよな。
きらっきらに目を輝かせてドタバタやってるキャラにほんともー和むわー。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月11日

かわいいけれどちょっとウザい?女子コンビのデコボコ騒動が微笑ましい。 1巻目の「ふたりぽっぽ/山口舞子」


ふたりぽっぽ(1)/山口舞子
芳文社/まんがタイムコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■■□□
 

お隣同士で幼馴染みなんだけれど、一方は好き好きと追いかけまわすがもう一方はそんな相手がウザくてしょうがない、という二人組を中心としたコメディ4コマ。
シチュエーションにこれといった特徴が無いのに、キャラのかわいさとおかしさと個性でぐいぐい読める学園コメディ。

 
黒坂こばとと白井くるりは同じ学校、同じクラスに通う女子高生。
家も隣どうしで一緒に育ってきたものの、互いの気持ちは少々ずれておりまして。
ノリはいいけどちょっとぽややんとした天然系少女のくるり。対して勝ち気で男勝りで口も悪いしおつむのほうもちと弱いこばと。
くるりはこばとのことが大好きでいつも追いかけまわしているけれど、当のこばとはそんなくるりが面倒でしょうがない。しかしどんなにこばとにつれなくされても、しつこく彼女に寄ってくるくるり。そんなヘンテコな幼馴染み。

彼女たちふたりのツッコミ役として共通の友達である桃ちゃんを加え、賑やかな学園生活を送るという内容なわけでして。
シチュエーションコメディとしては状況や設定をほとんど作りこまず、登場人物も二人+一人の他はあまり登場せず、ネタの幅も季節ネタや行事ネタが中心であまり広がりが無く。
が、読んでみるとこれが実に賑やかでかわいくて楽しいのですな。

基本的にキャラの掛け合いでネタを作るものの、ひとつひとつの返しやリアクション、ボケとツッコミの応酬にしっかりとキャラの個性が乗っかっており、言葉の選び方にもちゃんとこだわりが見られまして。
作画の面でも、絵としての構図やディフォルメによるかわいさの出し方にいちいち工夫があり、読んでいてちっとも飽きないのですな。
日常コメディがベースで、ギャグで笑いを取るタイプではないのに、オチのコマが素敵という4コマはそうそう無い。
読者寄りの目線でツッコミを繰り出す桃ちゃんだって、クールな顔して毒を吐くようないいキャラしてるもんなー。

キャラのおかしさを、絵でセリフで的確に、かつ自然と演出する漫画でして、設定やシチュエーションに全く頼っていないこの良さは作者のセンスの成せるワザ。
毎回、毎ページにくすっとさせられるコマのある4コマ。
表紙からするとなんちゅーかこうぱっとした特徴に欠ける作品に見えるようですが、読めば読んでいくごとに好きになれる。そんな漫画です。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月10日

島津豊久とか!あんな人とかこんな人とかが!異界で大バトルを開始!! 1巻目の「ドリフターズ/平野耕太」


ドリフターズ(1)/平野耕太
少年画報社/YKコミックス

オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●●●
万人向け度:◆◆◆◇◇
マニアック度:■■■■□
 

死んだと思われていた島津義弘がファンタジー世界へと飛ばされ、同じようにやってきた世界の英雄や偉人達とともに戦いを繰り広げるアクションファンタジー作。
次々と現れる世界中の有名人。何かがブチ切れたようなキャラクターの数々。そして燃えるシーンの連続に、震えるほどに続きが読みたくてたまらなくなってくる作品。
文句なしのオススメ。

 
関ヶ原の戦いにて、大将を逃がすためしんがりを務めた島津豊久は突然に別の次元へと飛ばされる。
そこはゴブリンやエルフがいてドラゴンがいて、魔法のアイテムもある世界。
そして豊久同様に、あらゆる時間とあらゆる土地から歴史上の偉人が飛ばされてきており、彼らは「漂流物(ドリフターズ)」と呼ばれている。
また「黒王」と呼ばれる謎の存在が人類を滅ぼそうと魔物達の大軍団を率いて侵攻を開始。黒王の配下にも現世からやってきた世界の偉人がいるが、こちらは「廃棄物」と呼ばれ異能の力を身につけている。

洋の東西を問わず、軍人から犯罪者までいるドリフターズにいちいち「おおっ!」と驚かされつつ、彼らのイっちゃったような個性が読み手の興奮を誘い、そして現れる軍勢と来るべき争乱の予感に期待も高まりっぱなしな作品。
設定やら枠組みは平野耕太のゲームギャグ漫画「以下略」を読んでいるとこのマンガが何から出来ているかうかがい知ることが出来、歴史好きで軍事好きでゲーム好きが思うにまかせた妄想を形にするとこうなる、といった具合でして。
ぶっちゃけるとFateとコーエーの歴史戦略シミュレーションとシヴィライゼーションと、その他洋ゲーを一緒くたにまとめて煮詰めるとこうなった、という感じ。戦国ランスもちょっと混ざってるかな。

悪く言えば中二病的ではあるものの、作者の持つ強烈なアクがキャラクターと作画に反映され、そういった器の素材なんかはまるで気にならずに没頭できる力を持つ漫画となってます。
各話ごとに訪れるインパクト抜群のシーンにパワフルな作画。そしてちょろっと登場しただけでばっちり印象に残る登場人物たち。
そのそれぞれに読み手がひとしきり魅了されたところで初めて、この漫画の素材について見回す余裕がようやく生まれるくらいなのですな。
そして細部の作りと歴史好きミリタリーマニアをニヤリとさせられるあれやこれやに感心するわけです。
ドリフターズのチョイスもそうだし、魔法のアイテムを用いて近代兵士のようにコールサインを用いて連絡を取り合う兵士たちとかもね。
んで登場する世界の偉人が軍人や戦国武将ばかりじゃないとこもいいのよ。
あと脱力を誘うようなギャグシーンも適度に挟み込まれることで、こう、作品の固さもほぐれて緊張と緩和があるのも良い感じ。

切った切られたのバイオレンスであり、作画も個性的なため受け入れ難いという方もおられるでしょうが、まぁアクション好きであるならば誰がどう読んでも楽しめるはず。
誰でもと言っても、普遍的な面白さというより、この作者の作り出した世界とキャラにみんな惚れ込んじゃうよという意味ね。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月07日

独特のシチュエーションが不思議なな共感を呼ぶ!忘れられない話が詰まった短編集! 1巻目の「薔薇だって書けるよ 売野機子作品集」


薔薇だって書けるよ 売野機子作品集
白泉社/書籍扱いコミックス

オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■□□□
 

白泉社刊「楽園」掲載の読み切り作品を集めた短編集。
特殊な状況下で起こった恋愛の行く末を叙情的に描く内容となっております。
冒頭に載ってる表題作は必読。この本の価値の半分以上はこの話のためにあると思う。

 
物書きの夫とコミュニケーション能力に問題のある妻との新婚生活を描く「薔薇だって書けるよ」
錯綜する4人の男女の感情と変化してゆく関係を定点観測的に描いたショートページ連作「オリジン・マイ・ラブ」
伝説となるべく自殺したミュージシャンが天へと向かう前にとった行動を追う「日曜日に自殺」
戦前の日本。姉妹二人暮らしで飴を売って暮らす女性に巡ってきた縁談と、そこに現れた一人の男との物語「遠い日のBOY」
過去の恋に引きずられる女性の、鬱積した思いを語る「晴田の犯行」

話の全体的な特徴は、SFやファンタジーまでとはいかなくとも、男女の関係としては少々特殊な位置にある登場人物同士の、絡み合う感情の末に芽生える何かを描くものとなっております。
その中で一番面白いのはやはり「薔薇だって書けるよ」なんですが、この話だけが他と作りが少々異なるため、ちとこの作者に対する判断に迷う。
この一番いい話だけが、ヒロインの特徴をひとつの仕掛けとして話を転がし、明確なオチを用意するタイプの作品になってまして。
その割にはギミックに対する伏線の貼り方が不十分だったり、他の話は傾向が違ったりするもんだから「この人の本来の作風はどこだ?」と迷うことになるわけですな。
もっとも、この「薔薇だって書けるよ」の話、あと2〜3倍くらいの尺でじっくり描いてみても良かったのかもなぁとも思っていたりするわけですが。

この1冊としてとらえた場合、読んで「よかったな〜」と思える良い漫画なのは確かでして。買って損は無いと思います。
問題はこれから先、この作者がどういったものを描いていくのかに興味が向いているところ。
ぱっと見ての個性や作風に明らかな特徴があるわけではないんで、長編作読んでみたいな。けっこう意外なモチーフを扱ったりしそうで。期待して待とう。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月06日

女の子とでっかい銃。この組み合わせは永遠です! 1巻目の「うぽって!!/天王寺キツネ」


うぽって!!(1)/天王寺キツネ
角川書店/カドカワコミックスAエキストラ

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◇◇◇
マニアック度:■■■■□
 

拳銃から小銃まで様々な鉄砲が女の子の姿となって暮らし、授業の中には軍事教練そのままな射撃実習もある学園。
そこに新任教師としてやってきた男の目線から描かれる、銃と女の子のある学園コメディ。
4コマと通常の漫画とのスタイルを切り替え、時にアクション展開有り時にほのぼのラブコメ有りの内容。
普通こういった内容の作品は企画優先のためキャリアの少ない若手漫画家が手掛けることが多いんですが、本作は実績のある描き手によるものでして。
そのためか落ち着きと安定感のある内容に。

 
世界中から人間の姿をした鉄砲が集まり、お勉強に励む青錆学園。
初等部ではサブマシンガン、中等部ではアサルトライフル、高等部にはバトルライフルが通っている、という具合。
主人公は中等部のFNCでそのお友達はM16A4にSG550、L85A1で、ガーランド先生がいて校長先生はスプリングフィールド。
登場人物の個性はそれぞれモチーフとなった銃の特徴に即したものとなり、スイス生まれのSG550は寒さに強く中立志向であったり、M16A4はちょっとうるさい関西弁だったり。
そんな学園にやってきた人間の先生と一緒に、実銃射撃の訓練と賑やかな学園ライフやお姉さん達とのバトルがあり、コメディリリーフの合間にこれら自動小銃についてのウンチクが披露されております。

系統としては萌え擬人化というくくりになりそうなところですが、ベテラン作家の手によるためなのか、じっくりゆったりと余裕をもって描かれているなという印象。
キャラクターの個性や特徴ははっきりと明確な下地を元に描かれ、かつ前面に出過ぎずうるさくなく、ひとつひとつのシーンで丁寧に読ませてくれる感じでして。
かわいい女の子に見せ場となるシーンも盛りだくさんで、記憶に残る場面がいろいろ多いのも特徴。
あぐらかいて遠射するSG550ちゃんとか、やけくそ連射するM14姉さんとか。いい構図が多いんですがこれを自然と描いてみせるのはさすがというところ。

「鉄砲の擬人化」ではあっても銃というモチーフにとらわれず、キャラクターコメディとしての楽しさ、賑やかさを巧く出している内容。
ちょいと変な言い方をすると、これならテーマが「鉄砲の擬人化」でなくても充分に読めるよなというほど。
あとは1巻まるまる終わっても名前すら出てこないどころか影が薄くなる一方の先生をどーするのかというところ。
冒頭で射撃スタイルが完璧だったというあれは特に伏線というわけでもなかったのかしらね。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月05日

これは素晴らしい姉キャラの登場!ドSでエロくてツンデレで!姉好き大歓喜! 1巻目の「鬼灯さん家のアネキ/五十嵐藍」


鬼灯さん家のアネキ(1)/五十嵐藍
角川書店/カドカワコミックスAエキストラ

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
万人向け度:◆◆◆◇◇
マニアック度:■■■■□
 

血のつながりのない姉に密かに恋する男子高校生が、その姉貴にもてあそばれおちょくられいたずらされまくるという4コマ。
誘ってるのかふざけてるのか煽ってるのかわからんけれども性根は良い娘、というツンデレ姉がかわいいですなぁ。
しかしツン成分は9割5分なわけで……。

 
鬼灯家に暮らす吾朗とハルは血のつながらない姉と弟。
吾朗はやや妄想過多で、ハルに対してやや変態的な想いを密かに抱くシスコン。
そんな弟の気持ちを知ってか知らずか、いいおもちゃで遊ぶように好き放題にいたずらを仕掛け、エロい挑発をし、吾朗を振り回すハル。
でもなんだかお互いまんざらでもない。そんな内容。

日常生活の中で普通に弟にひどい仕打ちをしてはケラケラと楽しそうに笑ってる姉ですが、肌を見せ下着をさらけだし、変態弟を挑発する姉。
目付きもキツめでショートカットでいかにもこう、イタズラ好きそうな女の子として描かれてまして。
これがなんかこー、もうね、凄くいいの……。
「姉モノ」というジャンルにあって、ひたすらにドSでやりたい放題でその上エロいし、ごくごくたまに見せる「デレ」がまたカワイイし。
こーいうキレイでかわいいお姉ちゃんに振り回されたいです!というややM気味の姉スキーに非常にオススメ。

4コマとして見ても、ハルの友達の女の子や吾朗の同級生などなど、キャラクターの広がりもあり、またそれぞれのキャラが吾朗との立ち位置を明確にすることでネタの幅も広がっており、なかなか飽きさせないようになってます。
ハルの友人に対する吾朗のリアクションと、そのやりとりに対して反応するハルの姿をちゃんとネタに組み込むことで、徐々にハルが吾朗に抱く本音が垣間見えてくるわけですな。
弟の前で半裸になっても気にしないようないたずらばかりのハルが、ほんとのところはどうなのか、ちらちらと見えてくるのが良いわけですよ。

優しくて包容力のある姉キャラもいいけど、こーいう弟をヒトとして扱わないようなキッツい姉もいいよね。
エロいつってもまぁ青年誌的セクハラお色気程度で、そんなに露出度高めなわけでもないですが、その分ちゃんとキャラで勝負している感じです。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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無表情娘・乙女ちゃんの「刑部の……!!」でニヤニヤ笑うのだ! 1巻目の「せいなるめぐみ/荒井チェリー」


せいなるめぐみ(1)/荒井チェリー
芳文社/まんがタイムKRコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■□□□
 

お嬢様なのにお嬢様らしくないヒロインを中心に、とある高校での学園生活を描くコメディ4コマ。ほんのりラブコメの香りも。
初期設定として明確なシチュエーションを持たないのに、読み進むうちにキャラの印象が強く残る作品。
これが巧さってやつかぁと静かに感心しました。

 
刑部聖は資産家の娘として有名なお嬢様女子高に通っていたが、自由な学園生活に憧れて10年前に過ごしてきた街へと帰ってくる。
転校することになった学校では、ツッコミ元気娘で従姉妹のひよりと、ひよりの幼なじみで気弱な草食系男子の光正とクラスメイトとなり、さらにはなにやら不穏な空気を漂わせる椿乙女という娘も加わり、賑やかな日々が繰り広げられるという具合。

親代わりの乳母(男)ラブラブでちっともお嬢様らしくないやんちゃ娘の聖に、そんな聖のセーブ役のひより。聖に対して密かな恋心が芽生えるひ弱少年の光正。そして聖に対してライバルとも憧れともつかない想いを抱く無表情腹黒少女(?)な乙女。
ほぼこの4人のみの登場人物で、他は取り立てて特徴となる設定を持たず、一見すると味付けも装飾も薄めに見える4コマでして。
しかし、静かに積み重ねられる会話により、それぞれの個性と関係とがじわじわと濃さを増してゆくという作り。
季節ネタ、行事ネタといったイベント類も極力避け、それよりは友達同士の仲を深める方向で、友人宅へのお宅拝見があったり休日にみんなでお出かけがあったりと、互いのプライベートをより知っていくという方向でシーンを形作っておりまして。

最近ではこの手の絵のかわいい4コマも増えてきているため、どーしても設定やキャラに初見の印象を与えるべく一発ネタや出落ちに走りがちな作品が目につきますが、そういった4コマとは一線を画するほどの安定感のある作品。
ただしこの、「明確な色みは無いが、じっくり読んでいくとキャラが良くなってくる」という読ませ方は、それでも読んでもらえるという前提が無いと厳しいのも事実であるため、ある程度の実績のある描き手なのでこれが許される、ということはあるでしょう。

それにしてもなんつっても、乙女ちゃんがかわいーのよ。
黒髪の美しい、おとなしそうな女の子なんですが、考えてることに表情が追いついてないだけで、その脳内はいろいろ忙しくて。
登場した当初は聖に対抗心を燃やし、何かあるたびに心中穏やかではなく「おのれ刑部の……!」と無表情に思いをたぎらせており。そのうち気持ちも変化していくんですが、この、無表情な黒髪のちんまい娘さんが、すげぇ剣呑なモノローグを垂れ流しにしてるというギャップが笑えてかわいいのだ。
途中から主役を食っちゃってるくらいだしな。

錯綜する人間関係の中心にありながら、当人はいたって呑気で明るい聖。
仲良しグループなんだけれども水面下で三角関係、四角関係を描いている恋の行方も気にならざるを得ないですな。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月04日

少女の純真な恋心は、その場しのぎで生きる大人に通じるのか?異色純愛ラブコメ! 1巻目の「たまりば/しおやてるこ」


たまりば(1)/しおやてるこ
エンターブレイン/ビームコミックス

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◆◇
マニアック度:■■□□□
 

多摩川沿いの河原を舞台に、恋に恋するようなまだまだ子供の女子高生と、人当たりはいいが何事にも真面目になりきれない社会人の男性との、微笑ましくもどこか危うさのある恋が進行するというストーリー。
まるっこくてかわいらしい作画ですが、コメディ仕立てだと思っていると「大人になりきれない大人」の姿を突きつけられるようでヒヤヒヤしますなこれ。

 
主人公の美和は、小学生の弟を持つ高校一年の女子。おっぱい大きめ。
弟が河原で仲良くなったという男性を同級生のあやと見に行ったところ、なぜかその男性に恋心を抱くようになる。
平日の昼間から小学生と遊んでいるその男の名前はハルオ。おっさんと呼ばれるほどではないが若者でもなく、さえない顔つきに冗談ばかりで調子のいい物腰の男。

何度と無く河原で会うようになり、美和は初々しい恋にはしゃぐものの、ハルオはハルオで別の恋の行方が危ういことになっておりまして。
そんな二人の、大人と子供の恋愛ごっこを色々と心配しつつも見守るあや。
やがて美和をめぐり、いかにもなリア充オーラを放つイケメン同級生が現れたり。

子供っぽい恋愛に浮かれる美和と、シリアス気味な周囲との対比が特徴的な作品。
お話の導入は美和を主観としたかわいらしいラブコメとして始まるものの、実のところ真の主人公はハルオのほうでありまして。

美和とのやりとりではいつもおどけていて飄々としていながらも、同棲中の彼女には愛想をつかされておりまして。
そんなハルオが子供っぽくはしゃぐ美和をあしらう様子は、まさしく大人が子供の遊びにテキトーに付き合っているという姿そのもの。しかし社会人としてはまともなサラリーマンでもありまして。
まるでそれは、大人が大人であることに甘え、人間関係の停滞を受け入れ本気で正面から問題にぶち当たることを避けているようであり。
コメディリリーフとしておどけた姿を披露していても、どこか「逃げている大人」なわけですな。

マンガとして読んでいる分には楽しいが、あくまで純情に恋に勤しむ美和の姿に、友人のあやならずとも「その男はやめときな」と言いたくなってきますが、かと思えばハルオという男は弱さを見せて美和に甘えてみせたりするし。
そうこうしているうちに、美和を狙って立場上はハルオのライバルとなる男も登場。こいつがまた、美和の同級生なんですがいかにも軽そうなチャラい野郎でして。
不真面目なおっさんといけすかないイケメンと美和の三角関係。
男性陣を誰も応援する気になれないラブコメというのも珍しい。

絵の質もあいまって、表面的には非常にほんわかとしたゆるゆる日常コメディなんですが、物語の本体は「真剣な子供の恋」に対して「本気になることを忘れた大人」がどう向き合うのかという恋愛ドラマであります。
ハルオがどう変化し、成長し、美和の気持ちに答え、いつか必ずやってくる修羅場にどう対処するのかが見どころとなるでしょう。
……しかしここぞというときに一歩身を引いたりするからなぁこのヘタレ男。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

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2010年07月01日

アシ目線で語られる、厳しくも愉快な漫画家の世界!? 1巻目の「あしなり(1)/葛西りいち」


あしなり(1)/葛西りいち
竹書房/バンブーコミックス/WIN SELECTION

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●○○
万人向け度:◆◆◆◇◇
マニアック度:■■■■□
 

「あしめし」てに漫画家アシスタントという職業の実態を描いた作者による、他の先輩漫画家へのインタビューを中心としたエッセイ作。
聞き手も漫画家であるため、「そこんとこどーなの」というぶっちゃけた話題が幅広く描かれております。

 
売れっ子漫画家へのインタビューマンガの合間合間に、業界裏話や少々ヤバめな体験談を挟みこむ作り。
あと著者本人がその漫画家先生の元で同時にアシスタントも体験するという内容でもあるものの、ほとんどメインはインタビュー部分か。
この巻で登場する作家は大和田秀樹、大井昌和、生藤由美。他にも実名登場する描き手の方々あり。
しかし記事の分量として大和田秀樹のパートが異様に多いのは何の意図なんだろ?面白かったからいいけど。

インタビュー内容は漫画家になったきっかけやデビュー時の思い出、漫画家としての志といった「作家さん紹介」の部分から始まり、製作環境やネタ出しといったノウハウの話題から、けっこう赤裸々なお金にまつわる話につながる流れ。
相手によって尺に差があり密度も異なるが、大和田先生のはなかなかの読み応え。
というか、作品とは異なるイメージに「大和田先生ったらステキ!」となんかかっこよく見えてくるほど。このあたりは素直に「そうだったのか!」と感心する部分も多い。

あとは対象の名前を伏せてでお送りする、アシスタントとして向かった先々で見聞きした体験談集。
業界が業界なだけに、なかなかに突拍子も無い話が色々と転がっております。特にやはり、お金と金銭感覚にまつわる話がおもしろいね。

Web掲載が前提のため最初から最後までフルカラーで、本としての作りも特徴的で目立つ一冊。お札や小銭が敷き詰められた表紙とかね。
また副題に「漫画家アシスタントで成金になれるか!?」とあるように、全編を通して売れる売れない稼ぐ稼げないといった、適度に下世話で品のないところがくだけた印象となっており、ある種の親しみやすさにもなっているマンガ。
大和田先生のとこなんかけっこう固めの話もあるのに、そう感じさせず楽しめるのだな。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 23:31 | トラックバック
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