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2008年08月26日
1巻目の「天顕祭/白井弓子」

天顕祭/白井弓子
全1巻
オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●○
(ひょうたん書店通販ページ)
大きな戦争があった後の日本。ヤマタノオロチとスサノオの神話が伝承として今も残る中で、「クシナダ姫」としての運命から抗おうとする1人の少女と、彼女とささいなきっかけで出会った鳶職の男との物語。
要素がいろいろとごっちゃまぜなのだが、これがみごとにひとつにまとまり昇華した良作。幻想性のあるSFロマンとか好きなら是非に。
舞台は日本。大きな戦争により国中が毒に汚染され、永い時を経て復興を成し遂げた未来。
そこでは現代と変わらぬ人の営みがあり、毒を避け汚染からの復興を祈る人々の思いは、やがてスサノオとヤマタノオロチの伝承と混在し、「天顕祭」という祭りが毎年行われることになる。そして50年に一度の「天顕祭」の日、秘められた儀式が執り行われようとしていた。
主人公は鳶職の男性。とあるきっかけから、いかにもわけありな少女を自分の下で働かせることになる。
実はこの少女は、50年に一度の「天顕祭」の日、ヤマタノオロチへの人身御供として捧げられる「クシナダ」であった。
逃げ出した彼女を追い、やがて神社からの追っ手がかかり…。
という導入部。
あらすじの説明だけでこんだけかかるほど、設定がやたら入り組んでおりまして。
SFであり古事記であり、伝奇ものであり、そして一組の男女のロマンスである、という漫画。
しかしこれらの設定要素がうまく折り重なり合い、絶妙なバランスでドラマを形作っているのは見事ですな。
元々は同人誌で発表された作品なんですが、好き勝手に設定を詰め込んだだけのように見えて、ひとつひとつの設定がストーリーにしっかり反映されておりまして。
しかしややこしいように見えつつも、ストーリーの本筋は男女の邂逅という一点のみに据えてあり、シンプルに読める物語でして。しかしそこに神話の伝承と、大昔の悲劇と、そして現在の物語とをうまく重ね合わせ、フラクタルなテーマがひとつにまとまり、そこにクライマックスを集約させるという仕組みも実に鮮やか。
柔らかでありながらシャープな筆致も手伝い、壮大で幻想的で、夢と現実を行き交う恐怖と、太古からの伝承と未来の日本があり、そして不思議なロマンスを堪能できる作品。
入り組んだ設定と重層的なストーリー展開は、やはり同人誌だからこそ描けた、というのはあるんだろうなぁ。
商業誌でこういうのはまずお目にかかれないような、独特の質感を持った作品になってます。
まぁ同人であるがゆえに、構成的に少々読みづらいところもあり、気軽に手に取るにはちょいとハードルが高い漫画ではありますが。
でも、良い漫画。
奥深く、恐ろしく、けれども最後に人の愛がある、という作品。
(ひょうたん書店通販ページ)
投稿者 bird_chief : 2008年08月26日 21:26
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