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2008年08月26日

1巻目の「雨無村役場産業課兼観光係/岩本ナオ」


雨無村役場産業課兼観光係(1)/岩本ナオ
オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●●○
 
(ひょうたん書店通販ページ)
東京の大学を卒業し、生まれ育った故郷の村役場に勤めることになった主人公が、若者も少ない過疎の村にて恋に村おこしに奮闘する群像恋愛ドラマ。
今もっとも注目すべき少女漫画家の1人、岩本ナオの「町でうわさの天狗の子」に続く長編連載作。ちゅか「〜天狗の子」やってる最中にまた別の連載作が読めるとはおもわんかった。嬉しい。しかも面白いし。

 
主人公は大学を卒業したばかりの大学生。都会での恋に破れ、生まれ育った村に戻り、役場勤めをすることになる。
10代の頃に遊んでいた仲間達はほとんど村に戻らず、同じ世代の若者は主人公をはじめ給食センターに勤めるメグと、コンビニでバイト中のスミオの3人だけ。
主人公は村の観光係として村おこしに奮闘する一方、メグとスミオと主人公との3人の間には互いに片思いの感情が芽生え、ともに暮らしながらも妙な三角関係が築かれていく。てな内容。

田舎暮らしとラブコメの人情純情恋愛ドラマになりそうな材料ですが、これが実に岩本ナオの個性が出ていて面白い。
過疎の村と村おこしというテーマでは、遊ぶところもやることもないため、倉庫で毎晩宴会を開く父親たちの姿や、「16歳で出来ちゃった婚で中退して家庭に入ったほうが家族には喜ばれる」という現実や、特産品と展示会のイベントを開いても年を追うごとに人が集まらなくなる様子など、妙に生々しい寒村の様子を描いておりまして。同時に、役場勤めの主人公も日々の実務の様子まで丁寧に描かれているのが特徴。
そして、寂れて年寄りばかりになろうとも、都会から帰ってきた主人公の目線で「ここはいいところだ」「みんなにもっと来てほしい」という主人公の強い思いがストーリーの軸となっている感じ。

一方、恋愛ドラマとしての側面では、仲良しグループの中でそれぞれに一方通行の恋心を抱きつつも、今の関係が壊れることを恐れてなかなか片思いが発展しないなかで、ある大きな事件が起こり、転機を迎えるという展開。

村おこしドラマと恋愛ドラマとの両面を同時に進行する内容でして、主人公の村と仲間に対する感情が実に鮮烈で、群像劇として面白い作品。
しかしやっぱ、岩本ナオ独特のタッチと感性で描かれるキャラクター陣が味わいがあってよいよなぁ。
ストーリーの中でヒロイン役となるメグだって、全然ヒロインっぽくないというか。ちっこくてまるっこくて給食センター勤務だし。他にも、18歳以下にはまるで見えない風貌のメグの弟とか、スーパーの誘致に失敗して村の親父達に混ざって倉庫で酒盛り始める村長とか。
でもいろんな変な奴がいても、そこにある種のユートピアがあるかのような、「村」という空間の描き方が素晴らしいですな。

あとセリフもいちいち良く、はっとさせられるような言葉が無造作に転がっており、思わぬところでぐっと心に響くんですな。
少女漫画としてのモチーフを用意しながらも、著者の個性で誰にでも楽しめる作品となっている良作。読んどけ読んどけ。
(ひょうたん書店通販ページ)

(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 2008年08月26日 20:57

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