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2008年01月18日

1巻目の「この世界の片隅に」(上)/こうの史代


「この世界の片隅に」(上)/こうの史代
オススメ度:★★★★☆
俺これ好き度:●●●○○
 
(ひょうたん書店通販ページ)
戦前の日本。広島に生まれ育った少女がやがて呉に嫁ぎ、そこで送る日常を時の流れとともに綴った作品。
こうの史代特有の繊細な日常性をもって描かれる静かなドラマですが、舞台が戦中の広島で呉で、となるともうね…。

 
広島の海辺で海苔作りを営んでいた家に生まれた少女。彼女がまだ幼かった頃から話は始まり、やがて人々の生活に戦時色が濃く反映されていく中で、絵を描くことが好きな少女だった彼女は、軍港・呉にある家に嫁ぐことになる。
少しばかりおっちょこちょいな彼女が送る、新しい家庭での新しい生活。やがて時が経つにつれ、そんなごく普通の家庭の普通の日常の中に、戦争の影響が出てきて…、という感じ。

舞台が戦時中であるものの、あくまでも中心に描かれているのは主人公が送る60年以上昔の生活そのもの。当時の資料を持ち出して描かれる家庭生活の描写は非常に丁寧であり、またそこでほのかな恋があったり、日々の細やかな出来事に心を動かしたりと、生活の中に人物の感情を乗せるのが非常に巧く、まさにそこに主人公達の人生の片鱗を感じることができます。

そんな日常が少しずつ、しかし確実に戦争の影響を受けていくわけですが、普通の生活が少しずつ戦時色に染まっていく様子も非常に丁寧に描かれ、巧いんですな。
…しかし日々の生活が変化していこうとも、まだこの上巻では、みんな笑って暮らしているんですな。
そんな彼女達が下巻でどうなっていくのかと思うと…。広島で、呉だもんな…。広島の原爆だけでなく、呉という都市は軍港であり日本一のであり工廠であり、重要な戦略拠点だったわけです。そのため、数度に渡る大空襲を受けたわけで…。

けれども、そういった悲惨な戦争の姿を陰に忍ばせながらも、戦時中にそこにあった人々の暮らしや日常までも否定していないのが特徴ですな。
戦争の影響を確かに受けながらも、そこに生き、人生を送る人々がいる。
その象徴として見開きを用いて描かれる、「タンポポと戦艦大和」が素晴らしい。

タンポポの綿毛が舞う丘の上から見下ろす、呉の海と港。やがて静かに巨大な姿を現す、戦艦大和。
その後数十年にわたり否定され続ける時代であろうとも、かつてそこにあったこの景色は、間違いなく美しかったのだろうなと、涙が出てきますよ。
(ひょうたん書店通販ページ)

(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちら)

投稿者 bird_chief : 2008年01月18日 01:03

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