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2005年11月23日

1巻目の「人情幕ノ内〜Fundamental Fiction〜」

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「人情幕ノ内〜Fundamental Fiction〜」(1)/昌原光一
集英社・ヤングジャンプコミックスBJ
11/18発売

江戸を舞台に繰り広げられる、人情味溢れる庶民のドラマがここにある――。
ヤングジャンプ青年漫画大賞グランプリ受賞作家が描く、新感覚ヒューマン・ドラマの決定版。珠玉の傑作撰歌11本一挙収録。
(集英社公式サイトより引用)

オススメ度:★★★☆☆
俺これ好き度:●●●●●
これは個人的に大絶賛しておきます。こういう時代劇を読みたかったんだ。
表紙はなんともアナログな水彩調ですが、中身はCGでシャープに描かれておりまして。
紙面の中に暮らす人々の息づかいまでも聞こえてきそうなほどに、緻密に描かれた江戸庶民の生活風景が素晴らしい。
この背景があることで、人物がより生々しいリアリティを持って読者に迫り、バラエティ豊かで面白い人情噺がさらに鮮やかで活き活きとした魅力に包まれるようになっております。
極めて情報量の多い背景画を見ているだけでも飽きない。
(各5段階評価・合計4つ星以下は感想無し)

 
【感想】
何ヶ月もずっと、月に何十冊も漫画を買ってきたのはこの一冊に出会うためだったんだと。まったくのノーマークで知らない作家の新刊で、平積みされているわけでもなかったこの一冊を、こうして店の棚から背表紙抜き取って買うために、今までずっと1巻目ばかり買い続けてきたのだと。
そう思わせてくれた一冊。
この一冊に出会えたことが嬉しくて嬉しくて、話が泣けるとかそういうの以上に、読みながらずっと涙流してました。マジで。

CG作画による緻密な画面の細かさは生半可なものではなく、貧乏長屋の所帯から居酒屋の店内からとにかく凝りに凝ってます。
定型的な「時代劇」の景色とは格段に違う世界がここにあるのですわ。ごちゃごちゃとした長屋の土間見てるだけで息をのむほど。
そこに配置された人物も背景と違和感なく画面に立っているため、紙面の向こうの世界が本当に活き活きとしてるんすよ。

そんでもってそれぞれのエピソードもいいしねぇ。
露骨に泣かせがあったり際だってドラマティックだったりとせず、話の本体は登場人物同士の会話を中心にして、繰り返される言葉の応酬が静かな盛り上がりを生み、じわっと読み手の心に染み入るんですよ。

短編集としてエピソードは実に幅広く、病を患う商家の娘、博打打ち、ノミの夫婦、落ちぶれ絵師、前科者、幼い女中、浪人、出戻り、元極道の旦那衆、とまぁ豊かな顔ぶれの主役陣が登場します。
そんでもって全編通して特定の長屋が中心になってまして、あっちで見た顔がこっちでも……、という作りのため、読み進むうちにこの長屋の世界が徐々に輪郭をとっていくんですな。

さらに、ただの人情劇ではなく時代劇作品としての描き方もしっかりとしたもので
(↓長屋に住む貧乏夫婦が、高級料亭の引札にあった会席の内容について会話するシーン
   「それから口取肴?」
   「さかなってくらいだから何か焼物でも出んのかね」
このやり取りを、欄外の注釈も説明セリフも無しに書いちゃうってのは、すげぇな。
でもってこの会話が出てくる短編「ノミの夫婦」もいい話なんだよな。雨が降って商いに出られなくなった夫と、ちょっとした手遊びに「起こし絵」を作る妻との、本当に些細な会話により語られるエピソード。これに限らず全編通して、日常のほんのすぐ横にある小さなドラマが、なんとも言えず良いのだわ。いわば落語の世界ですな。

CG作画で徹底した時代劇を描くとどうなるか、という試みも目を引くのはもちろんなんですが、短編の中ではわざとマンガチックに描いたり、あえて全て関西弁で通したりと、愛嬌のある遊びも加わりまして。
隅から隅まで読んで面白い。
おいらは今とても幸せだ。

【こんな人に読んでほしい】
いろんな人に読んでもらいたいなぁ。人によってはこの手のは退屈だとか説教くさいとか思われるかもしれないけど。
(1巻目レビューの概要と、採点基準はこちらから)

投稿者 bird_chief : 2005年11月23日 01:38

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