« ある地方店エロゲ担当の2004年総括 | メイン | 床屋さんのマンガ »
2005年01月19日
1年目の挑戦−未開の地で同人ソフトを売るということ
2004年末の冬コミ新作も順次入荷しております。
そして我がひょうたん書店においては、私が専属担当となって同人ソフトを本格的に扱いだしてから、およそ一年が経ちました。
大手チェーンの専門店も無ければ、そもそも同人ショップというのが無いに等しかったこの鹿児島の地で、同人ソフトというものを小売店として広めようと四苦八苦してまいりました。
その一年目の軌跡をざっと。
同じように、専門店の無い地方都市で同人ショップやるべかと目論んでる方は大いに参考にしてください。
まず最初に、調べればすぐに分かることなので隠したりもったいぶったりしませんが、うちは同人ソフト屋としてはフランチャイズです。
大手の協力の元にやっていけてます。しかし、同人ソフトであろうと同人誌であろうとこれはしょうがないところなんです。
なぜなら、大手のフランチャイズ抜きに同人モノ扱おうとすると、無数のサークルと直接に連絡取り合って直接に取り引きしなきゃいけないから。つまりそもそも同人は流通路が無い。卸しを担うところが無い。
だからこそのフランチャイズ。リリース数が増える一方の現状に対してはこれしか手段が無いと思われます。
そして次に言えるのは、一元管理された情報源が乏しいので、担当として自分で情報収集しなきゃいけないこと(特に、流通に縛られない同人はリリース時期や仕様の変更等が多々あるのでこまめな情報収集は必須)。
書籍であれば、取次(本の卸し問屋)からの案内(販売週報)がある。エロゲであれば各社からの雑誌がある。CDでもDVDでも、発注書なり提案書なりがあるのでリリース情報くらいは分かる。
が、同人に関してはひたすらWeb上で自分で探して回らなければならない。大中小問わず無数のサークル全てそうです(エロゲ専門誌には同人ソフトのコーナーはあるけど、微々たる情報量だし)。
その意味では、同人ど〜らくさんにはいつもお世話になっております。改めて感謝。
手探りでありながらも情報源と仕入れ先はどうにかなったとして。
ここから辛抱強くやっていかなきゃならないのは、地元のお客さんへの「ここに同人ソフトあるよ」というアピールと、「同人ソフト」というものについての認知度を上げていくこと。
ほとんどこれに尽きます。
地方における同人ソフトの位置づけというのは、ちょっとそういうのに詳しい奴が自分の近しい位置の人間に紹介したりして、仲間内だけで盛り上がる、といった現状に過ぎなかったと思われます(月姫クラスは除く)。
かく言う私も、数年前に知り合いがやってるQOHの画面を見て、「良くできたフリーソフトがあったもんだ」くらいにしか思ってませんでしたから。
とりあえずモノは揃えた。大手サークルのも展開してみた。しかし
ネット上での評判やアキバでの盛り上がりがいかに凄かろうとも、地元のお客さんはとにかく認知度が低いことに愕然としましたな。
「あのー、月姫って、ここありますか?」
「このサークルのこのソフト、手に入らない?(中小サークルの2〜3年前のCG集を指して)」
「ひぐらし?ああなんか聞いたことある。1%とかなんか」
これらは実際に私が聞いたお客さんの声ですが、こーいったことを耳にするたびに「……ああそうか、そうなのか、この段階から始めないといけないのか」と認識を改めたもんで。
要は「同人ソフト」というものの根本が根付いてないといいますか。その根っこをどうにか固めたように見せるのに一年はかかりましたかねぇ。
これはいまだに上司には内緒なのですが、月箱をうちに売りに来たお客に「あのね、それはちゃんと流すとこに流せば、うちで売るよりもすごい値がつくから」と丁重にお引き取り願ったこともありました。
それはともあれ、同人の認知度を上げるにはともかく現物を見せること。ゲームであればデモ映像を流すこと。商業ではありえないような映像や、同人とは思えない出来の良さを見せればちゃんと反応は返ってくるもんです。
が、しかし、うちは商業ソフトも扱っておりまして。ここで問題が。
店頭でデモ映像を流すためにと設置されたPCの画面からは、単価も高く売上金額も大きい商業PCソフトの映像が優先して流れることになります。
…特にうちみたいな小規模店舗では、お高い備品はそうそう気軽に導入できないわけで…。
しかしそこを我慢して!単価は数倍違うけど辛抱して同人の紹介をやらないことには次に進まないわけですな。
これにより爆発的な効果を生んだのがマリグナント・バリエーション(あっ、今URL拾いに見てみたら〜FINALの情報が変更になってる)
きっかけは些細なことでして。初代マリグナのDVDエディションがまだ店頭で入手可能だった頃、情報収集の合間に拾ったデモ映像があまりにステキに面白かったので「ああ、これお店で流すときっとお客さんもウケてくれるかな」と流してみたのが始まりでした。
これがもー素晴らしい反応が返ってきまして。
特にうちのような、元々が町の本屋さんとしてスタートしているような店舗では、お客さんの中に非ヲタ層も多く、あの単純明快さはそういった層にも大いにウケまして。
…衝撃的告白になりますが、なんとうちでは、マリグナFINALジャム新生の売り上げ本数が、メルブラRe・actの売上本数を追い抜いています。
……
……
って、ちっがーーーう!
たしかにマリグナは売れて当たり前だけど違うの!メルブラはそんなもんはるかに凌駕するくらい売れてないと困るし、東方シリーズだって同じくらい売れていないとおかしいの!
と、なんかもう変な意味で頭を抱えてしまう事態でしたが、まぁ特殊な事例ではあるでしょうしね(地域性により売れるタイトルが違うというのは貴重なサンプルケースだとは思うけど)。
けど、同人も何もまったく知らない一般のお客さんがマリグナの映像を見て、「……これは、ナニ?」ていう反応を示してくれるのはほんと担当冥利に尽きるといいますか、楽しかったなぁ。
そして運良く、といいますかひとつの転機となったのはやはり2004年に世間を賑わせた「ひぐらしのなく頃に」の登場でしょう。
このタイミングでこういう盛り上がりのソフトをうちが見逃してどうする!
と思ったのですがやはり一番最初の時期、お客さんの反応は鈍かったですねぇ。本当になんでこんなお客さんの質に地域格差が出るのか不思議でしょうがなかったです。
しかし、それでも、盛り上がろうとしているソフトが盛り上がりの初期にお店にあることを見せて、認知してもらうしかお店としては方法が無いわけで。ここも我慢の時期。
話題のソフトが、ちゃんとお店にあって、そしてそのお店が「分かっている」紹介をしているというのは重要なことでして。とにかくこれで「ああ、ここのお店は分かってるんだな」と思われてくれないことには、今後の同人ソフトの雲行きも危ういと思ったので、ここは正念場でしたね。
……それでも正直なところ、ちょっと及び腰ではありましたが…。後悔。反省。
そうこうしてるうちに迎えた2004年冬コミ。
ここで幸運だったのは、比喩表現でもなんでもなく、ビッグタイトルがかつてないほどに複数リリースされたことでしょう。うちと懇意にしていただいているアキバの同人大将(私が勝手に呼んでる)でさえ、「こんなことは今まで初めてだ」と言っていたくらいでしたから。
フランスパン、黄昏フロンティア+上海アリス、AQUA STYLE、そして07th Expansionと、今最も凄いサークルが揃って新作出したわけで、ひょうたんとしてもこのビッグウェーブに乗らないわけにいかない。
そして一年間、同人ソフトというものを扱ってお客さんの認知も上がってきているはずだ。
ここは勝負だ!
となったわけです。
どーいった勝負してるかはまぁ、実際にお店に来てみてくださいな。南九州だけど。
こんな感じで一年間やってきましたが、「まだまだこんなもんじゃないはずだ!」と思うのが正直なところ。
うちが数ヶ月かけて売る本数なんか、アキバのちょっとした店では数日で、大手だと1日で売っちゃうわけですからね。
それだけアキバに人も物も集中してるってことなんでしょうけど、それではあんまりじゃん!イナカの人間ほったらかしかよ!と言いたくもなります。
おかげで首都圏や大都市部と、田舎の地方都市とでヲタ市民の地域格差が生まれてしまうのは悔しいですからねぇ。
……というか、そもそもネットが発達し、情報の取得も通販も容易な現在において、なんでヲタに地域格差が出るのか不思議でしょうがないんですけど。誰か明解な答えを教えてくれませんか。
なんのかんのと言いましたが、小売り店員としても同人担当としても私はまだまだ半人前にも及ばないヒヨっ子なわけでありまして。偉そうなことは全然言えたもんじゃないのが実際です。お客さんの反応にしたってなんにしたって、私がやることやってなかった責任だってあります。
とにかく日々勉強です。いつの日か、「宮崎からも熊本からも南九州一帯の同人欲しい人はうちに来なさい!なんなら福岡からでもいいぞ!」と胸を張って言えるようになりたいところです。というか今すぐ言いたい。
しかしまずはお店しっかりしなきゃなんないですからねー。
日本でただ1人とか、国内でここだけ、なんて位置にはそうそうなれるもんじゃないですが
地元じゃおいらただ1人1番だぜー、ていうのは運があればチャンスは巡ってくるものでして
そのチャンスがこうして目の前にあるおいらは幸運だよなーとしみじみ感じております
投稿者 bird_chief : 2005年01月19日 01:11
Trackback Pings
このエントリーのトラックバックURL:
http://b-chief.org/mt/cgi/mt-tb.cgi/95
このリストは、次のエントリーを参照しています: 1年目の挑戦−未開の地で同人ソフトを売るということ:
» [オタク][ゲーム]鹿児島で同人ソフトを売ると/オタクの地域格差 from ARTIFACT@ハテナ系
http://b-chief.org/archives/2005/01/pnjnltg.html 同人ソフトが人気が出てきたとい... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年02月04日 20:21
コメント
>……というか、そもそもネットが発達し、情報の取得も通販も容易な現在において、なんでヲタに地域格差が出るのか不思議でしょうがないんですけど。
一概には言えないと思うんですが
>が、同人に関してはひたすらWeb上で自分で探して回らなければならない。
ってのがやはりあるかと思います。いかにネットが発達しても紙の一覧性にはかなわないように
例えば秋葉を歩くのとwebを見て回るのにも差がでるのかもしれません。
職場が秋葉の人間としては歩いてるだけで目に入る情報量が違いますもの。目に入れようとしている、ではなくて目に入る、という量で。
格差を埋めるべく周りのアンテナを高くするよう是非頑張ってください。俺もいつ地方に転勤になるやら。
投稿者 kasuke : 2005年01月19日 09:34